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ExcelをAIで効率化する|関数も集計もAIに相談

経理や総務、事務の現場では、毎日のようにExcelを開きます。請求書の集計、経費の仕分け、顧客リストの整理。やること自体は決まっているのに、「この関数どう書くんだっけ」「セルがずれてエラーになった」と手が止まる時間が、地味に積み重なっていきます。少人数のチームでは、こうした作業を専任で覚える余裕もありません。そこで役立つのが、生成AIへの相談です。Excelの操作そのものをAIに丸投げするのではなく、わからないところを質問しながら進める。この使い方なら、専門知識がなくても今日から始められます。

実際に、Excel作業に費やす時間がどれくらい圧縮されるか。あるサービス業の4人事務所(スタッフ2名が経理と総務を兼任)では、月次の経費集計に毎月4〜5時間かかっていました。AIへの相談を使い始めて3か月後、同じ作業を1.5〜2時間で終わらせられるようになったといいます。ポイントは「AI自体が集計をする」のではなく、「詰まったときの相談時間がゼロに近くなった」こと。検索して答えを探す時間、試行錯誤でエラーを直す時間、この2つが大幅に減りました。

関数や数式は「日本語で聞く」から始める

Excelでつまずく最大の原因は、やりたいことを関数に翻訳できないことです。生成AIは、この翻訳を肩代わりしてくれます。

たとえば次のように、やりたいことをそのまま日本語で伝えます。

  • 「A列が『未入金』の行だけ、B列の金額を合計したい」
  • 「日付から月だけを取り出して、月ごとに件数を数えたい」
  • 「別シートの顧客名簿から、IDが一致する会社名を引っ張ってきたい」

すると、SUMIFCOUNTIFSVLOOKUP といった関数を使った数式と、その意味の説明が返ってきます。大事なのは、返ってきた数式をそのまま貼り付けるのではなく、説明を読んで「なぜこの形になるのか」を一度確認することです。列の位置や条件の指定方法を理解しておくと、次回から自分で応用できるようになります。

うまく動かないときは、エラーメッセージや実際のセルの状態を伝えて聞き直すと、原因の切り分けまで手伝ってくれます。「#N/A と出る」「合計が0になる」など、症状を具体的に書くほど精度が上がります。

よくある質問パターンと、返ってくる回答のイメージ

実際の質問と回答のやり取りを一つ例示します。

質問(担当者が入力したテキスト): 「Excelで、C列に部署名、D列に金額があります。C列が『営業部』の行のD列の合計を出したいです。数式を教えてください。」

AIからの回答(要旨):=SUMIF(C:C,"営業部",D:D) を使います。第1引数が検索する列(C列全体)、第2引数が条件("営業部")、第3引数が合計する列(D列全体)です。部署名の前後にスペースがある場合はヒットしないので、TRIM関数で除去してから集計すると安全です。」

このやり取りで得られるのは数式だけでなく、「表記ゆれが原因でヒットしないことがある」という現場で頻出する落とし穴の情報です。検索では記事を読んで自分で気づく必要がありますが、AIへの相談では状況に合わせた注意点まで一緒に来ます。

エラーを「症状で」伝えるコツ

  • #VALUE! → 「数値のはずのセルに文字が混じっているか、計算の対象がおかしい」と伝える
  • #REF! → 「参照先のセルやシートが削除・移動された」と伝える
  • #DIV/0! → 「割り算の分母が0またはブランクになっている」と伝える
  • 「合計が0になる」 → 「数値が文字列として入力されている可能性がある。セルの書式とTYPE関数の結果を教えてください」と回答が来ることが多い

症状のほかに「どのセル範囲に何のデータが入っているか」を一文で添えると、的外れな回答が減ります。

集計や整理の「段取り」を相談する

AIが役立つのは数式だけではありません。「どう進めればいいか」という段取りの相談相手としても有効です。

たとえば、月末に部署ごとの経費を集計する場面を考えます。手元には、日付・部署・項目・金額がバラバラに並んだ明細があります。このとき、

  1. まず「このデータを部署別・項目別に集計したい。どんな手順がいいか」と相談する
  2. ピボットテーブルの使い方や、必要な前処理(表記ゆれの統一など)を教えてもらう
  3. 実際に操作しながら、詰まった箇所を追加で質問する

という流れで進めると、闇雲に試すよりも早く形になります。「顧客リストの重複を見つけたい」「住所から都道府県だけ抜き出したい」といったデータ整理も、考え方ごと聞けるのが利点です。

ピボットテーブルを使うべきケースと使わないケースの見分け方

集計方法を相談すると、AIはしばしば「この規模なら SUMIFS 関数で十分」「月をまたいで繰り返し集計するならピボットテーブルが効率的」という判断基準を示してくれます。自分でゼロから判断するより、「どちらがいいか」を先に聞いてから手を動かすと、後で方針を変える手間がなくなります。

目安として押さえておくと便利な使い分けは次のとおりです。

  • SUMIFS 向き: 集計条件が決まっていて、シートの決まった位置に結果を出したい。毎月同じレイアウトで報告する定型帳票など。
  • ピボットテーブル向き: 条件や切り口を試行錯誤したい。データ量が多く、ドラッグ操作で集計軸を変えたい。経営者向けの月次レビューを素早く準備したいなど。

「どちらを使うべきかわからない」という状態でAIに相談しても、データの行数や集計頻度を伝えれば適切な方を提案してもらえます。

小さな会社での具体的なシナリオ

従業員8名の建設業者(事務担当1名)の例です。毎月、工事ごとに材料費・外注費・人件費を分けて集計する必要がありましたが、Excelの使い方に自信がなく、関数を組むたびに1〜2時間かかっていました。AIに「工事番号・費目・金額の3列があって、工事ごと・費目ごとに集計したい」と相談したところ、SUMIFS を使った集計シートの構成案と、数式の具体的な書き方が返ってきました。最初に型を作ってしまえば翌月からはデータを貼り替えるだけ。集計作業が月2時間から30分に短縮されました。

表記ゆれや形式の統一にも使える

「株式会社」と「(株)」が混在している、全角と半角の数字が混ざっている。こうした細かな不統一は、集計の精度を下げる原因になります。どんなルールで揃えればよいか、どの関数や置換機能を使えばよいかをAIに整理してもらうと、見落としを減らせます。

よくある表記ゆれと、対処に使う機能の組み合わせをAIに確認すると、次のような答えが返ってきます。

  • 全角・半角の混在 → ASC 関数(全角→半角)または JIS 関数(半角→全角)で統一
  • 前後のスペース → TRIM 関数で除去
  • 「株式会社」「(株)」の混在 → 置換機能(Ctrl+H)で片方に統一してから集計
  • 日付の形式バラバラ(「2026/06/01」「2026年6月1日」混在)→ DATEVALUE 関数かテキスト区切りウィザードで日付型に統一

これらを一度にAIに「こんなデータがある、何を先に直すべきか」と聞くと、優先順位ごとに整理して返してくれます。

使うときに気をつけたいこと

便利な一方で、押さえておきたい注意点があります。

  • 数値は必ず自分で検算する。AIが提示した数式が、意図どおりの範囲を計算しているとは限りません。合計やレコード件数は、小さなサンプルで一度確かめてから本番に使います。
  • 機密情報の扱いに注意する。顧客名や口座番号など、社外に出せない情報をそのまま入力してよいかは、利用しているツールの規約や社内ルールを確認してください。実データの代わりに、形式だけ似せたダミーで質問する方法もあります。
  • 最終判断は人が持つ。請求や支払いに関わる数字は、ミスがそのまま損失につながります。AIはあくまで下書きや相談役として使い、確定は担当者の目でおこなうのが安全です。

これらは難しいことではなく、「鵜呑みにしない」という基本の姿勢に尽きます。

検算の具体的な手順

「一度確かめてから本番に」と言っても、どう確かめればいいかが曖昧だと実行しにくいので、具体的な手順を示します。

  1. 行数を先に数える。 COUNTA 関数でデータ行数を数えておく。集計後にSUMIFSでヒットした件数と一致するか確認する。
  2. 目視で抜き取りチェック。 集計元データをフィルターで絞り込み、手動で合計した値とAIが提案した数式の結果を突き合わせる。5〜10行のサンプルで十分。
  3. 別の方法で同じ結果を出す。 例えばSUMIFで出した値と、ピボットテーブルで出した値を比較する。2つが一致すれば信頼度が上がる。

ダミーデータで質問する方法

機密情報が含まれるデータについて質問するとき、実際のデータを使わなくても相談できます。以下の手順でダミーデータを作ります。

  1. 列の構成(日付・部署名・金額など)はそのまま残す
  2. 実際の氏名・社名・金額を、架空のもの(「山田商事」「100,000」など)に置き換える
  3. 行数は5〜10行で十分。構造が伝わればよい

この形で「こういうデータがあって、○○したい」と伝えれば、AIは構造から判断して適切な方法を返してくれます。実データを使う必要は一切ありません。

AIが間違える代表的なケース

  • 絶対参照と相対参照の混同: AIが提示した数式を他のセルにコピーしたとき、$記号が抜けていて参照がずれることがある。数式をコピーする前に $ の位置を確認する習慣をつける。
  • テーブル構造の誤認: 「A列に日付、B列に金額」と説明しても、実際にはヘッダー行がある場合、AIが1行目からデータが始まると誤解することがある。「1行目はヘッダー、データは2行目から」と明示すると精度が上がる。
  • Excel バージョンの差異: XLOOKUPLET などの新関数は、古いバージョンのExcelでは使えない。AIが最新関数を提案してきたら、「Excel 2019でも使えますか」と一言確認するとよい。

よくある質問

Q. ChatGPTなどの無料ツールで十分ですか?それとも有料プランが必要ですか?

A. 関数の書き方を聞く、段取りを相談するといった用途なら、無料プランで十分なケースが多いです。ただし、会話の履歴が保存されず、前のやり取りを参照しながら続きを聞けないことがあります。同じ作業を繰り返す、社内ルールを覚えさせておくといった使い方をするなら、社内向けにカスタマイズされたAIツールや有料プランのほうが効率が上がります。

Q. Excelに直接AI機能が組み込まれていると聞きましたが、ChatGPTなどに聞くのと何が違いますか?

A. Microsoft 365のCopilot機能はExcelのファイルを直接読み込んで操作できるため、「このファイルのC列を集計して」と言えばその場で実行してくれます。一方、外部のAIチャットツールはファイルを直接操作しないので、「こういうデータ構造で、こんなことをしたい」と説明して方法を教えてもらう形になります。Copilotはより自動化に近く、チャットAIは相談・学習に向いています。どちらが良いかはコストと使い方次第で、今すぐ始めるならチャットAIへの相談が手軽です。

Q. 一度教えてもらった使い方を、次回以降も同じように使いたい。記録する良い方法はありますか?

A. AIとのやり取りで確認した数式や手順を、Excelのコメント機能や、別シートの「メモ欄」に貼り付けておくのが最も手軽です。「この数式は○○のために使う」「条件をここで変える」などの説明も一行添えておくと、数か月後に見返したときに意味がすぐわかります。チームで共有するなら、共有フォルダに「よく使う関数メモ.xlsx」を一つ作り、チームで書き足せる形にしておくのも有効です。

まとめ

Excelの効率化は、すべてを自動化することではなく、つまずく時間を減らすことから始まります。関数を日本語で相談し、集計の段取りを聞き、整理の方針を一緒に考える。この小さな使い方を積み重ねるだけで、毎日の作業はずいぶん軽くなります。まずは次に手が止まったとき、検索する前にAIへ一言聞いてみることから試してみてください。なお、こうした業務の相談先を社内に常駐させたい場合は、業務AIのFLEXのような仕組みを検討するのも一つの方法です。

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