社内AI推進担当者がやるべきこと|ゼロから90日のロードマップ
「今後のAI活用はあなたに任せます」と上司から言われたとき、何から手をつければよいか分からなくなることは珍しくありません。AIツールの選定・社内ルール整備・パイロット推進・効果測定と、やることは多岐にわたります。この記事では、社内AI推進担当者として最初の90日間にやるべきことを段階別に整理します。
AI推進担当者の役割
社内AI推進担当者は、AIの技術専門家である必要はありません。むしろ「業務を理解したうえで、どこにAIを当てはめるかを判断し、現場と橋渡しをする人」が求められます。役割は3つに整理できます。
| 役割 | 内容 |
|---|---|
| 現状把握・テーマ選定 | どの業務でAIを試すべきかを判断する |
| 推進・定着支援 | 担当者のサポートと効果確認 |
| 社内展開・ルール管理 | 利用ルールの整備と全社展開の設計 |
技術知識よりも、業務理解と社内調整力が求められる役職です。
最初の30日:現状を把握する
やること
- 各部門で「繰り返し行っている業務」を聞き取る(ヒアリングシートを活用すると効率的)
- 現在社内でどのAIツールが使われているかを把握する(担当者が個人で使っているケースも含めて)
- 上司・経営層に対して「何を解決するためにAIを使うか」の目標を合意しておく
なぜ最初に現状把握が必要か
やってしまいがちなのが、「とりあえず全員にAIツールを触らせてみよう」という始め方です。業務の課題を整理しないまま一斉展開すると、「何に使えばいいか分からない」と言われてそのまま使われなくなります。AIの適用先を絞るためには、先に業務の繰り返しポイントを把握することが必要です。
ヒアリングの効率的な進め方
部門全員ではなく、1部門1〜2名の「現場を知っている人」に絞って聞くのが現実的です。「1日の中で、同じ作業を何度も繰り返している業務は何ですか?」という問いを基点にすると、具体的な候補が出やすくなります。30日の目標は「AI化の候補となる業務リストを5件以上」まとめることです。
31〜60日:小さくパイロットを動かす
やること
- 候補リストから「最もリスクが低く、効果が見えやすい業務」を1〜2件選ぶ
- 担当者1〜2名を選び、具体的な業務でAIを試してもらう
- 週1回、使い心地と効果を聞いて記録する
パイロット対象の選び方
「重要度が高い業務」より「繰り返しが多く、結果がすぐ確認できる業務」を優先します。機密情報が含まれない・間違いが起きても影響が小さい・担当者が前向きに試せる、という3条件を満たす業務が理想的です。
メールの下書き作成・議事録の要点整理・問い合わせへの一次回答文案など、文章を整える系の業務は始めやすいケースが多いです。
失敗パターン:目標を高く設定しすぎる
最初のパイロットで「大幅な時間削減を数値で証明しなければ」という設定はリスクが高いです。最初は「担当者が1人でも使い続けたいと感じる」という定性的な成功基準で十分です。継続して使われているかどうかが、次のステップへ進む判断材料になります。
61〜90日:効果を確認し、展開を設計する
やること
- パイロットの結果を整理し、「何が削減できたか」「何がうまくいかなかったか」を記録
- 社内利用ルール(誰が・何に使ってよいか・情報管理方針)を1枚にまとめる
- 次の展開先として、パイロットに近い業務を持つ部門や担当者を選定する
社内ルールは完璧を目指さない
ルール作りに時間をかけすぎると推進が止まります。最初は「個人情報・社外秘情報はAIに入力しない」「出力は必ず人が確認してから使う」「使用するツールは〇〇のみ」程度で十分です。実際に使い始めてから問題が起きたタイミングで追加・更新する方が、現実に即したルールになります。
90日後に経営層に報告する内容
経営層への報告では、次の4点を整理して伝えると意思決定の材料になります。
- パイロットで試した業務と担当者
- 確認できた効果(作業時間の変化など概算で可)
- 使い続けたいと感じている担当者の人数と声
- 次に展開したい部門・業務の候補
数字で示せる部分は示しつつ、「継続して使われているかどうか」という定性的な評価も合わせて伝えることで、次の投資判断の材料になります。
よくある失敗パターン
- ツール選びに時間をかけすぎる:比較検討が長引いて試す前に疲弊する。まず1つで試す
- 全部門同時展開:部門ごとに業務が違うため、1部門ずつ順番に進める方が定着しやすい
- 担当者だけが使い方を知っている状態:うまくいった使い方は即座にメモ化し、チームで共有する習慣をつける
- 上司への進捗報告を後回しにする:経営層の関心が薄れると予算・権限の確保が難しくなる。月1回は状況を共有する
よくある質問
Q. IT部門との連携はどこから始めれば良いですか?
最初は「どのAIツールを使うか」という承認と、「情報セキュリティの方針に沿っているか」の確認を依頼するのが現実的な入口です。パイロット段階では大きなシステム連携は不要なため、使用するツールと扱うデータの範囲を事前に共有するだけで動き始められます。
Q. AIに詳しくない担当者がパイロットに参加する場合、どう支援すればよいですか?
ツールの操作研修より、「この業務の、この部分だけに使う」という使い方を最初に絞って伝える方が定着しやすいです。1つの成功体験を作ることが先で、汎用的な使い方は後から自然に広がります。
まとめ
社内AI推進担当者の役割は技術者ではなく「業務課題を整理し、現場と経営をつなぐ人」です。最初の90日は、把握→パイロット→効果確認の流れを繰り返しながら、小さく確実に成功体験を積み上げることが最優先です。AIWAY Group では社内AI活用の推進支援も幅広く行っています。AI活用の基礎から組織全体への展開方法については AIWAYのメディア(AIリテラシーと活用事例) もあわせてご参照ください。